こんにちは!石ちゃんです。
今回は本谷有希子氏の小説「生きてるだけで、愛。」のレビューです。
ではいってみましょう!
ざっくりあらすじ
躁鬱病の寧子はコンパで知り合った津奈木と暮らしています。
しかし関係はとても「良い」とは言い難い状態。
そこへ綱木の元恋人が現れ寧子に自立を求めます。
寧子と津奈木はどうなるのか・・・?
序盤
物語の最初、葛飾北斎の「富嶽三十六景」についての話が出ます。
北斎は現代の写真技術でやっと撮ることに成功した瞬間をあの当時の絵の技術で描いていた・・・という件です。
ここのシーンが話のキーを握っているのですが、
伏線としても全体を語る「キーワード」としても見事な機能を発揮しています。
序盤から見た終盤
最後のシーン、津奈木が寧子に
「おまえのことがわかりたかった」
という趣旨のセリフでこのお話は終わります。
これは完全に伏線効果の賜物となっています。
というのうのは
“北斎が富士のことを分かろうとした”結果、奇跡的なショットを描けた事と、
「津奈木が寧子を分かろうとした」という心象そのものが対になって描かれているのです。
わかろうとすること
北斎と津奈木の対比でも確認できるように、この小説で一貫して言われていることは
「相手の受容と理解」
といえるでしょう。
相手を「わかろうとする」ことそのものが「愛」に繋がっているとも言い換えができます。
メンヘラしての寧子
主人公の寧子は精神病を抱えています。
これも描き方としてとてもうまい。
「精神を病んでいて仕事をしていない」というファクターを通すことで
無条件に「人を受容するとはどういうことか?」という問いをたてています。
言い換えると「愛される条件とはなんなのか?」というかなりヘビーなテーマを描いています。
その描き方が「仕事をしていないメンヘラの寧子」は愛されるのか?という設定そのものなのです。
全裸のシーン
終盤、寧子はマンションの屋上で全裸になり津奈木に、「あんたに私の瞬間でいいからわかって欲しい」という旨のことを伝えます。
ここでも上記した北斎が富士山を「わかる」という主旨の話と繋がっています。
話に一貫して通じているテーマはこの相手を「わかる」といことにつきると思います。
恋愛小説というより愛そのもののはなし
このお話、厳密に言うと「恋愛小瀬」というより、「愛」そのもののストーリーと認識するのが読み解くコツだと思われます。
駆け引きによって関係に価値を見出すというより
そのひとそのものを理解することによって関係や意味を「作り出していく」過程のおはなし。
それを描くためのパーツとして
「富嶽三十六景」という奇跡的な作品を導入するのは見事としかいえません。
そもそも愛とは?
ここは私の主観なのですが、
私は「愛」とは「受容」だと思っています。
自分の見返りを求めずに相手を尊重して受け入れる。
第一が自分でなく相手を如何に理解するか?を考える。
こう書くととても簡単ですが、これは大変な作業です。
ただ受容すればいいというだけでなく
的確に相手がどのような人間なのかを見極めなくてはなりませんし、自分の余裕やキャパが必要です。
相手のよくない点、自分と違う点も受け入れるとなると「受容」はほんとうに骨が折れます。
しかし、それがあるレベルまでできれば、その相手に自分のことも理解してくれる?かもしれません。
それは下心、といえば下心なのですが関係がそのようになれば素敵ではないですか。
理解されたいから理解するへ
寧子は最終的に「津奈木に理解されたい」というスタンスから「あんたをわかりたい」という立ち位置にポジションを変えます。
そして「だけど私は私でもわからない」という吐露も同時にしてしますのです。
この心象の持って行き方には痺れました!
ー自己と他者という圧倒的な隔たりと理解それをこんなに見事に描いてある小説もあまりありません!
ちなみに私はこの小説を読んでビービー泣きました。
「生きてるだけで、愛。」
結局この本のタイトルに全て集結するのかもしれません。
「生きている、それだけで愛なんだよ」というかなり母性的な意味合いが強いのですが。
ひとが愛し愛されるのはその人の条件によってではありません。
もちろん条件が良ければ良いに越したことはありませんが条件ではない。
それはそのひとが「存在している」ということそのものから立脚することではないでしょうか?
そこから、相手をわかる、理解するということが始まり、自分も理解される。
その道程を描いた見事な作品となっています。
最後に
いかがだったでしょうか?「生きてるだけで、愛。」レビューでした。
「愛」という観念的なテーマに真っ向から立ち向かった本谷有希子氏の意欲作です。
話のシーンの転換が早く、気持ちがいいのと、なにより心に染みるテーマになっているので是非ご一読ください。
きっとなにか残るものがあるとおもいます!
では、またお会いしましょう!
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